無人航空機飛行マニュアルは、国土交通省のDIPS2.0から、飛行許可を申請する時に必ず選択しなければならない項目。
でも、多くの資格保有者が、実際に隅々まで目を通していない資料のひとつです。
国土交通省って難しい文字ばかりで疲れてしまうんです。
確かにそうですよね。
でも罰金払うのはもったいないので、知っておきましょう。
「選択した飛行マニュアルを遵守しますよ!」という意味で、飛行許可をもらうので、もし守れなければ、航空法違反となり、罰則を受けることになります。
今回は、特に重要なポイントに絞って解説しますので、最後まで読んで、安全な飛行の参考にしてください。
飛行許可を取るなら、年間通して許可がもらえる「包括申請」が欲しい人はこちらの記事で解決できます。
2023年最新版|ドローン DIPS2.0を徹底攻略!【包括申請を取得する方法】
ドローンで飛行許可を取る時に選択する航空局標準マニュアルの種類
ドローンの飛行許可を取るために、DIPS2.0で申請を行います。
申請の途中で、どのマニュアルを使用するか尋ねてくるため、6つの中から選択する必要があります。
マニュアルによって飛行ルールが違います。
種類をクリックするとマニュアルの内容が確認できます。
熟読している人は少ないと思いますが、飛行の目的に合わせた遵守マニュアルになっているので、必ず目を通しておきましょう。
マニュアルの種類 | 内容 |
---|---|
航空局標準マニュアル01 | 「個別申請」で使用可能 |
航空局標準マニュアル02 | 「包括申請」で使用可能 |
航空局標準マニュアル01(インフラ点検) | 「個別申請」かつ「飛行目的がインフラ点検」で使用可能 |
航空局標準マニュアル02(インフラ点検) | 「包括申請」かつ「飛行目的がインフラ点検」で使用可能 |
航空局標準マニュアル(空中散布) | 「個別・包括申請」かつ「飛行目的が農薬散布」で使用可能 |
航空局標準マニュアル(研究開発) | 「個別申請」かつ「飛行目的が研究開発」でドローンやプロポの開発に限定して使用可能 |
飛行マニュアルは、国土交通省DIPS2.0が標準で用意されたもので、遵守することができれば、包括許可もおりやすいメリットがあります。
許可がおりやすい反面「しばり」があることを理解しておきましょう。
無人航空機 飛行マニュアルの重要ポイント
ドローンの飛行マニュアルの中で、最も需要が多いのは「航空局標準マニュアル02」の包括申請で使用されるものです。
ではどんな内容が記載されているのか、気になる飛行の方法について、マニュアルに沿って詳しくお話していきます。
注意する項目にはマーカーを引いていますので参考にしてくださいね。
安全を確保するために必要な体制
- (1)場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
- (2)風速5m/s以上の状態では飛行させない。
- (3)雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない。
- (4)十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない。
- (5)飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。なお、塀やフェンス等を設置することや、第三者の立入りを制限する旨の看板やコーン等を飛行範囲や周辺環境に応じて設置することにより立入管理区画を明示し、第三者の立入りを確実に制限することができる場合は、これを補助者の配置に代えることができる。
- (6)補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
- (7)補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。
- (8)ヘリコプターなどの離発着が行われ、航行中の航空機に衝突する可能性があるような場所では飛行させない。
- (9)第三者の往来が多い場所や学校、病院、神社仏閣、観光施設などの不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。ただし、当該施設から飛行の依頼があった場合は、休校日、休診日、早朝など第三者が往来する可能性が低い時間帯とし、飛行経路を当該施設内に限定した上で、一定の広さのある場所を飛行させるものとする。また、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止するほか、突風などを考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
- (10)高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。
- (11)高圧線、変電所、電波塔、無線施設などの施設上空及び付近では飛行させない。ただし、高圧線、変電所、電波塔、無線施設などの施設点検等の業務として飛行が必要な場合は、飛行範囲を限定し、不必要な飛行をさせないようにする。さらに、一定の広さのある場所を飛行させるとともに、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止する。また、突風、電波障害など不測の事態を考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
- (12)飛行場所付近の人又は物件への影響をあらかじめ現地で確認・評価し、補助員の増員等を行う。
- (13)人又は物件との距離が 30m以上確保できる離発着場所を可能な限り選定するとともに、周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。
- (14)飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には速やかに飛行を中止する。
- (15)人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
- (16)人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。ただし、業務上、やむを得ず飛行が必要な場合は、常時操縦者と連絡を取り合うことができる補助者の配置を必須とし、飛行範囲を限定して不必要な飛行をさせないようにする。さらに、一定の広さのある場所を飛行させるとともに、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止する。また、突風などを考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
- (17)夜間の目視外飛行は行わない。
- ※3-1に加え、飛行の形態に応じ、3-2から3-6の各項目に記載される必要な体制を適切に実行すること。
「DID地区の上空では目視外飛行は行わない」と言いつつ、業務上やむを得ない場合は条件付きで許可されるとあります。
補助者の重要性が問われる部分ですね。
補助者は資格所有者である必要はありませんが、ドローン飛行に関する確かな知識と、判断力が必要なことがわかります。
30mの距離を保てない飛行を行う際の体制
人又は家屋の密集している地域の上空における飛行又は地上又は水上の人又は物件との間に 30mの距離を保てない飛行を行う際の体制
- (1)飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる。装備できない場合は、第三者が飛行経路下に入らないように監視及び注意喚起をする補助者を必ず配置し、万が一第三者が飛行経路下に接近又は進入した場合は操縦者に適切に助言を行い、飛行を中止する等適切な安全措置をとる。3-1(5)に示す飛行範囲への第三者の立入管理措置を行う場合には、補助者の配置に代えることができる。
- (2)無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知を行う。
夜間飛行を行う際の体制
- (1)夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。
- (2)飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施する。
- (3)操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限る。
- (4)補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。3-1(5)に示す第三者の立入管理措置等を適切に講じることにより、補助者の配置に代えることができる。
- (5)夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する。
夜間の目視外飛行は基本的に禁止されているので要注意です。
目視外飛行を行う際の体制
- (1)飛行の前には、飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する
- (2)操縦者は、目視外飛行の訓練を修了した者に限る。
- (3)補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。3-1(5)に示す飛行範囲への第三者の立入管理措置を行う場合には、補助者の配置に代えることができる。
目視外飛行の知識は、ドローンパイロットにとってとても重要です。
目視範囲から離れても、補助者がドローンを監視できる補助者と「双眼鏡」が必須であることも頭に入れておきましょう。
民間資格で取得した目視外飛行のスキルは、飛行許可申請に適用されますが、国家資格では、目視外はオプション試験なので、違いを理解しておくことが必要です。
危険物または物件投下を行う際の体制
- (1)3-1に基づき補助者を適切に配置し飛行させる。3-1(5)に示す飛行範囲への第三者の立入管理措置を行う場合には、補助者の配置に代えることができる。
- (2)危険物の輸送の場合、危険物の取扱いは、関連法令等に基づき安全に行う。
- (3)物件投下の場合、操縦者は、物件投下の訓練を修了した者に限る。
ここで言う危険物輸送と物件投下は、主に「農薬散布」を意味しています。
農薬散布は、通常の資格とは別に、農薬散布に使用するドローンの購入先で、別の講習を受けることが求められます。
非常時の連絡体制
- (1)あらかじめ、飛行の場所を管轄する警察署、消防署等の連絡先を調べ、2-8(17)に掲げる事態が発生した際には、必要に応じて直ちに警察署、消防署、その他必要な機関等へ連絡するとともに、別表のとおり許可等を行った国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所まで報告する。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている空港事務所に電話で連絡を行う。
黄色のマーカーで印をつけた箇所は、とても大切な部分です。
包括申請で「人・物30m以内」「目視外飛行」「DID地区」「夜間飛行」の許可が降りていても、標準マニュアルを遵守して、飛行を行いましょう。
航空法に違反すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
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無人航空機 飛行マニュアルへの加筆【独自マニュアルで申請】
航空局標準マニュアルは、クリエイティブな空撮を行う人にとっては、しばりが多いデメリットがあり、仕事の依頼などで、飛行させたい場合、マニュアル通りでは飛行させることができないケースが出てきます。
独自のマニュアルが必要になるケース
仕事の依頼には「特徴のある映像」や「オリジナル性の高い映像」を求められることがあるため、マニュアル通りでは要望に応えられないことがあります。
- 学校の依頼でグラウンド上空で飛行させてほしいと頼まれた
- 夜間の撮影依頼で目視外飛行が必要な環境下での飛行が必要となった
- 部活の顧問からフォーメーションを確認するため空撮を依頼された
標準マニュアルだと違反に該当してしまう場合、自分で加筆し「独自マニュアル」を作成して申請することができます。
DIPS2.0から、飛行許可申請をする際に、オリジナルマニュアルを添付して申請します。
補正指示がくることもありますが、目的に合わせた飛行をするために申請してみましょう。
マニュアルを変更するということは、国土交通省が定めている安全基準を、緩めることにもつながるため、審査も慎重になり、日数もかかります。
独自マニュアルを作成する場合は、微妙な言い回しが必要なので、いくつか例をあげてご紹介します。
難しい飛行をするために独自マニュアルを作成した一例
航空局標準マニュアル | 独自マニュアルの一例 | |
---|---|---|
例-1 | 人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。 | ただし、業務上、やむを得ず飛行が必要な場合は、常時操縦者と連絡を取り合うことができる補助者の配置を必須とし、飛行範囲を限定して不必要な飛行を行わないようにする。経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は速やかに飛行を中止する。 |
例-2 | 夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず | やむを得ず業務上、記載の飛行が困難な場合、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物を事前に確認し、適切な飛行経路で飛行させるとともに、飛行経路全体を見渡せる位置に補助者を配置し、安全な飛行ができるように、補助者からの助言を常に受け入れる環境を整えるものとする。 |
例-3 | 風速5m/s以上の状態では飛行させない。 | ただし、業務上必要不可欠と判断した場合は、風速5m/s以上であっても、機体メーカーが定めた風速抵抗値を超える突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即座に飛行を中止する。 |
いずれの例も、巧みな言い回しで、申請されています。
この通りに記載すればOKというわけではないので、あくまでも参考としてご覧ください。
本来禁止されている飛行ができるように、独自で変更を加えるわけですね。
独自マニュアルは、航空局標準マニュアルをもとに、禁止されている項目に対して「安全体制を完備することにより飛行が可能」になるよう追加編集して申請を行うものです。
飛行実績や、独自マニュアルの内容によっては、許可されない場合があるので、技量に応じた申請を行いましょう。
どうしてもお仕事で使用しなければならないケースで、飛行許可をもらうまでに時間が限られている場合は、行政書士に相談する方法があります。
独自マニュアルを、行政書士に依頼する場合は、20,000円位〜が相場になっているので、予算がある人は相談してみてください。
まとめ|無人航空機飛行マニュアルは遵守すべき【守らなければ航空法違反!】
今回は、多くの人が見逃しがちな、航空局標準マニュアル02についてお話してきました。
航空局標準マニュアルは、国土交通省が準備した基本的なマニュアルなため、飛行条件が制限されますが、ドローン飛行に慣れるまでは、安全を重視した最適な内容と言えます。
飛行実績を積んで、ビジネスでの活用や、特徴のある空撮をしたい時に、制限された内容では支障が出る場合に、独自マニュアルを作成して、国土交通省に再度申請すると良いでしょう。
その時も安全最優先の飛行を心がけてくださいね。
スカイファイト神戸では、これから広がるドローンの未来のために、ルールを守って安全に飛行できるよう、スクール生の技術・知識の取得、資格取得後の相談などを行っています。