航空法だけでも覚えるのが大変なのにドローンってそれだけじゃないんですね。
ドローンの飛行には多くの法律や条例が関わっています。
違反すると法律ごとの厳しい罰則があるので注意が必要です。
逆に考えれば知識を身につければ誰も持てないスキルを手にするチャンスでもあります。
法律を犯したらどんな罰則が待っているか、どうすれば法律に触れないかを知っていればトラブルを回避できる上、仕事ならクライアントからも重宝されます。
あまり知られていない知識を身につけて圧倒的に信頼されるパイロットを目指しましょう。
今回は
- 道路交通法
- 民法207条
- 個人情報保護法
- 産廃法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 文化財保護法
- 海岸法・港則法
- 河川法
- 地方条例
飛行させる時の法律の他にも、2022年の航空法改正で新しく追加された法律「飛行日誌の義務」があります。
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① 道路交通法
公道をドローンの発着場所として使用する時には道路交通法が適用され許可なく道路を使用することはできません。
道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、および道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする(1条)、日本の法律である
道路交通法第1条
道路を使用する自動車や歩行者の妨げになる工事の申請は道路交通法に基づいて管轄の警察署への申請が必要になっています。
道路からの離発着はわかりました。では道路の上を飛行する場合も許可が必要なんですか?
道路の上空を通過する「単なる飛行」は使用許可は不要とされていますが交通に危険を及ぼし交通妨害になると判断されれば道路交通法違反に触れることがあります。
道路の高さ制限とは
車両の高さは4.1メートル以内でなければならない
対して
飛行時のドローンは航空法で人や物件から30メートル離れていなければならない
飛行のルールを守れば違反になりませんが少しでも自分の飛行に不安がある時は管轄の警察署か警察庁まで問い合わせすることをおすすめします。
そんな法律知らなかった!じゃすまないですよね。
申請せずに違反すると、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
<管轄>警察署
民法207条「土地所有権の範囲」
ドローンの飛行は自分の私有地で飛行させる以外は「誰かの土地の上を飛行する」ことになります。
たとえ横切るくらいの飛行でも所有者から不法に侵入したと言われればそれまです。
(土地所有権の範囲)
e-GOV 法令検索
第二百七条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
これってどういうことなんですか?
民法は主に土地の所有に関係する法律です。
ドローンで言えば「誰かの土地の上を飛行する場合」に所有者の許可が必要になります。
国土交通省飛行が定める航空法ではABC以外の空域の飛行は可能と表記されていますが地権者や管理者がいる場合は勝手に飛行させてはいけません。
一般的には高度300メートルが土地所有権の限界と言われているので300メートルを超えると民法上は規制外になりますが、ドローンの飛行可能な高度は150メートル未満なのでドローンの空域ではありません。
つまり許可が必要ってことになりますね。
所有者の土地の上空を飛行させる場合は許可を得るようにしましょう。
許可を取らずに飛行させると
地上で言えば自分の土地に許可なく足を踏み入れると不法侵入になるのと同じで、土地の所有者が損害を受けたと判断した場合は「損害賠償」を請求されることがあります。
<管轄>法務省
こんなことも違反に!
飛行前に必ずスマホで確認が必要です「災害・救助のために飛行が禁止される緊急用務空域とは?」
個人情報保護法
個人情報保護法って人の顔とかをネットに出してはいけない法律ですよね。
一般的にはそうですが、もっと大事なポイントがあるのでしっかり理解しておきましょう。
個人情報として判断されるのには基準があります。
- 表札がわかるように写っている場合
- 個人が特定されるような場合
- 撮影した映像にぼかしを入れても加工前の映像が保管されている場合
特にインターネットへ公開した場合はプライバシーと肖像権の問題に該当します。
- 個人の住居や外観
- 車のナンバープレート
- 洗濯物
- 屋内の様子
住所や生活状況がわかるものが映像に映り込んでいた場合はプライバシーの侵害、肖像権の侵害に問われる場合があります。
撮影を仕事にしている人は特に注意が必要なんですね。
万一個人情報・プライバシー・肖像権の侵害で罰則を受けたりすることがあれば取引先からの信頼も失い仕事の受注にも大きく影響します。
個人を特定する撮影や編集、映像の公開を行わないように注意してください。
個人情報保護委員会からの命令に違反すると(2022年4月改定)
・個人の場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合:1億円以下の罰金
<管轄>法務省
SNSやYouTubeに公開する場合はこちらも参考にしてください。
総務省発行「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」
産廃法
産廃法は産業廃棄物を取り締まる法律でドローンが産廃法に抵触されるケースは2つあります。
- ドローンを廃棄する場合
- 飛行中に誤ってドローンを紛失(ロスト)した場合
ケースによって対応が違うので覚えておきましょう。
①いらなくなったドローンを廃棄する場合
ドローンには電子回路が組み込まれているので捨てる場合は産業廃棄物扱いになります。
市町村が定めた適切な処理をしないと産廃法違反になります。
使わなくなった機体やバッテリーは、地域の市町村へ問い合わせして自治体に合わせた方法で処分してください。
②飛行中に誤ってドローンを紛失(ロスト)した場合
紛失(ロスト)した場合、放置すれば産業廃棄物違反により検挙されるリスクがあります。
どこに飛んで行ったかわからなくなってしまったと言う時でも、ドローンは見えない所で問題を引き起こしている場合があるのでとにかく探してください。
機体を放置しないことはドローン操縦者の責務です。リポバッテリーはゼリー状なので流れ出した液体がドローンに残った電源をもとに発火する恐れがあります。
ただの落し物でないことを理解の上最大限発見するよう努めましょう。
廃棄物処理法違反をすると
5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられます。
さらに不法投棄とみなされた場合、法人に対しては3億円以下の罰金が科せられることがあります。
<管轄>環境省
探索費用を負担してくれるドローン保険もあり、対人、対物、機体の損壊、機体の捜索・回収も行ってくれます。
小型無人機等飛行禁止法
200g以上のドローンには航空法が適用されます。
100g未満のドローンはどこで飛行させてもいいってことですか?
100g未満のドローンも原則飛行させてはいけない場所があります。
2015年の首相官邸にドローンの墜落事故があった翌年に制定されたのが小型無人機等飛行禁止法です。
- 国の重要な施設等
- 原子力事業所
- 外国公館等
- 防衛関係施設
小さなドローンでも飛行が禁止されています。小さいから大丈夫というわけにはいかなないので注意してください。
違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
<管轄>国土交通省
飛行禁止には例外があります。
- 対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行
- 土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行
- 土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行
- 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
わざわざややこしい施設の近くで飛行させることはないと思いますが、犯罪を抑止する意味でも定められていると理解しておいてください。
文化財保護法
文化財保護法は、文化財の保存・活用と国民の文化的向上を目的とする法律です。
確かに日本の文化財は大切なものが多いですよね。
歴史建造物は新しく作れないので壊すと大変なことになります。
文化的な遺産を継承するために自治体では後世へ伝えていこうとする活動が行われています。
大切な文化的財産に誤ってドローンをぶつけてしまうと、文化財保護法に違反して罰則を受けることになります。
文化財保護法195条、重要文化財を損壊し、毀損し、又は隠匿した者は
5年以下の懲役または禁固又は30万円以下の罰金に科せられます。
<管轄>国土交通省、文化庁
重要文化財へ衝突させてしまうと大変です。
あまり知られていない墜落の原因をお話していますのでよかったらこちらの記事も参考にしてください。
ドローン墜落7つの原因!GPSやセンサーが引き起こす想定外の事故とは?【墜落を防ぐ方法も解説】
海岸法・港則法
海岸はドローンの規制も緩いので比較的飛行させやすい地域ですが海にももちろん制限があります。
- 地上のルール:離発着の許可:海上保安庁、管轄の警察署
- 空のルール:航空法の許可:国土交通省
- 海のルール:港則法の許可:海上保安庁
それぞれに許可を得ないと違反行為として罰せられることがあります。
例えば離発着を道路から行うとすれば道路交通法に該当するため警察の許可が必要ですし、海岸から行う場合は海上保安庁の許可が必要になります。
ほとんどの海岸はDID地区(人口集中地区)には該当しないので国土交通省の規制は緩いと言えますが、念のため事前に確認するようにしてください。
また海水浴や潮干狩りなど人が集中する地域での飛行はできないので注意が必要です。
そういくことなら海の上を飛行させる場合は海上保安庁の許可が必要ですか?
海の上だけを飛行するのなら許可は必要ありません。
と言いたいところですが、航空法で定められた「ルール」があります。
・日中(日の出から日没まで)に飛行させる
- 目視の範囲内で飛行させる
- 第三者、物件から30メートル以上の距離を保つ
- 催し物など人が集まる場所の上空を避ける
- 危険物を輸送しない
- 物を投下しない
ルールの範囲内で飛行できない場合には国土交通省への許可申請が必要になります。
海岸法に違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
<管轄>海上保安庁、国土交通省、警察署
河川法
河川法は河川や河川敷を取り締まる法律で国や県、市町村で管理されています。
都心の河川敷はDID地区(人口集中地区)に指定されているところが多くドローンを飛行させることができませんが都心から少し離れたところは許可なく飛行できる地域となっています。
とはいえ、自由に飛行できるわけではなく、必ず管理者に事前確認をとっておく必要があります。
河川は4つに分類されていて管理者が異なります。
河川の種類 | 管理者 |
---|---|
一級河川 | 国土交通大臣 |
二級河川 | 都道府県知事 |
準用河川 | 市町村長 |
普通河川 | 地方公共団体 |
管理者が違うので許可を受ける問い合わせ先も変わりますね。
問い合わせ先がわからなければまずは市役所、区役所へ連絡して申請先を聞くといいでしょう。
一級河川と二級河川は各都道府県の土木事務所へ連絡することが多いようです。
飛行中にもし警察 が来たら?
電話で飛行許可が取れていても飛行中に近所の人から通報され、警察官が来て尋問を受けることがあります。
許可をもらった相手の組織名、担当者の名前を聞いておき、もしもの場合に備えましょう。
河川法に違反した場合は
3ヶ月以下の懲役または20万円以下の罰金が科せられます。
<管轄>国土交通大臣、都道府県知事、市町村長、地方公共団体
地方条例
公園や公共施設でのドローン飛行は条例よって規制されることがあります。
- 都市公園法
- 自然公園法
都市公園のドローン飛行は都市公園の管理者により規制され、100g未満のドローンを持ち込むことさえ禁止されている場所があります。
自然公園は都市公園よりも規制は緩やかな傾向があり飛行できる場所もあるので公園事務所や役所へ確認の上、同意・承諾を得てから飛行するように心がけましょう。
条例は国土交通省の規制よりも優先されるんです。
国土交通省の規制「DID地区」でない地域でも条例で飛行禁止とされる地位では飛行できません。
条例に違反すると
都市公園法:一年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
自然公園法:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
自然公園法は豊かな自然を保護するための規制で、定公園、国立公園も含まれ風景、動植物が対象となります。
自然を破壊するような行為は厳しく罰せられるので注意が必要です。
まとめ:ドローンが関わる法律と罰則事例9つ!重要知識を知ってスキルと信頼度をUP!
いかがでしたか。
今回は航空法以外でドローンに関わる9つの法律についてお話してきました。
- 道路交通法
- 民法207条
- 個人情報保護法
- 産廃法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 文化財保護法
- 海岸法・港則法
- 河川法
- 地方条例
いずれも法律なので違反すると罰則があります。
規制が厳しいのはドローン操縦者からすると辛い話ですが、これだけの知識を持っておくと違反をすることもない上に仕事を受注する際に専門家レベルの対応ができます。
もし仕事として受注した場合に事故や違反をしてしまうと信用を失うばかりかクライアントに迷惑をかけてしまうこともあります。
十分な知識を蓄えて一流のドローンパイロットを目指しましょう。